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学習コストで分けた三段階と社内規則のずれ

生成AI 日本語 調査 現場 ガバナンス

はじめに

2026 年 9 月 30 日、Zenn に「生命科学研究 × AI 活用ハンドブック」が公開されました。

この手書は生命科学分野の学者への聞き取りをもとに、AI 活用を三段階に分けています。区分の軸は機能ではありません。習得にかかる時間です。

本稿が答えるのは、日本の現場にある1つの具体的な問題です。生成 AI を使ったのに効果が出ないという状況を、社内の規則がどこまで支えているかという軸で読み解きます。

手書の内容は二次報道で確認しています。参照した情報は 2026 年 9 月 30 日時点のものです。

三つの段階

この分け方で重要なのは、機能を数えていないことです。数えているのは習得に何日かかるかだけです。

同じ道具であっても、1つ目の段と3つ目では必要な準備がまったく違います。1つ目の段はブラウザを開くだけです。3つ目は、何を任せて、何を返してもらうかの取り決めが要ります。

軸が機能だと、規則は現場より先に終わる

多くの社内規則は、機能を軸に切っています。チャットは許可、外部ツールへの接続は条件付き、自律的な動作は禁止。3 つを並べて禁止リストをつくります。

これは正当な書き方です。ただし、現場の進み方とはずれています。現場は習得時間の順に動きます。そして習得時間が最も短い1つ目の段で、統制が最も薄くなります。

1つ目の段は、承認も記録も要りません。誰の了解も受けずに動きます。これは規則違反ではありません。規則がまだない状態です。

1つ目の段は放置される

1つ目の段を無視する組織は多くあります。リスクが明確に見える 3つ目だけを書こうとするからです。

その結果、統制が必要な場所を見誤ったまま、3つ目の規則だけが整備されていきます。

効果が出ないという報告は、この順序のショートカットから生まれます。最初の段で情報を持ち出したあと、止める手順がないからです。

段階ごとに書く内容

規則を書くときは、段階ごとに書く内容を変えてください。1つ目の段は「使える道具の名前を挙げる」。2つ目と3つ目は「渡したものを誰がどこに残すか」を書きます。

3つ目を書くときに確認しておきたいのは、戻ってきた判断を誰が読むかという点です。読む人が決まっていないなら、3つ目は運用できません。

遅れてきたのは2つ目と3つ目

問題は、2つ目と3つ目にあります。

2つ目は、組み合わせた道具が閲覧できるデータの範囲に制約がかかります。院内データ、患者データ、未公表の実験値です。この段で初めて、規則の記載が実際に効きます。

初めて持ち込まれるのは、健康と安全に触れる領域です。社内の規則が最初に効くのも、この領域です。

3つ目は、判断そのものを渡す段です。実行責任の所在を規則が書いていない現場は多くありません。任せる側の範囲、戻す側の範囲、差し戻す側の権限。この3つが欠けています。

記録が残ってから、規則が届く

制度が追いつくのは、記録がそろった後です。残るのは、承認日、対象範囲、責任者の3つかです。

CESA の開発者向け調査(2026 年 9 月、中間発表)では、74% の人が AI 利用に関する社内方針を整備済みと答えています。一方、生成 AI を製品そのものに組み込んでいるのは 12% にすぎず、日本の企業で agentic AI を本番運用している割合は 17%(14 か国中最下位)でした。

規則は揃っていて、現場は届いていない。制度と現場は別の線を走っています。

今日できる確認

自分の組織で、次の 3 問に答えてみてください。

  1. 1つ目の段について、認可したツールはどれか。
  2. 2つ目について、渡したデータの範囲を記録する場所はどこか。
  3. 3つ目について、戻された判断を確かめる者は誰か。

1 番目に「まだ決まっていない」と答える現場が最も多くなります。3 つの段の扱いは、この 1 問から決まります。

書けていない段は、承認する側の不安ではなく、抜け道そのものです。

参考情報

⚠️ 上記はいずれも二次報道です。正式な一次資料は未取得のため、数字は変更される可能性があります。引用する際は原典を確認してください。