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AI の責任所在が決まらないまま、エージェントに仕事を渡し始めている

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はじめに

この稿は、日本の会社で「AI の責任者は誰か」が決まらないまま、エージェントに仕事を渡し始めている状況を扱います。

2026 年 10 月 6 日、Infor は企業の AI 採用に関する調査の第 2 版を公表しました。調査は YouGov が 2026 年 8 月に行い、7 市場の 2,111 人の意思決定者が回答しています。第 1 版は 2026 年 4 月で、4 市場の 1,024 人が対象でした。

日本の数字は、他市場と逆の方向を向いています。責任者の不在は 7 市場で最多で、不満の少なさは 7 市場で最少です。この稿は、その 2 つを同じ理由で読み解き、開発者が先に決められることを述べます。

数字が示す日本の位置

Infor の調査(Enterprise AI Adoption Impact Index 第 2 版)から、日本、シンガポール、オーストラリア、世界平均を並べます。

| 項目 | 日本 | シンガポール | オーストラリア | 世界平均 | |---|---|---|---|---| | AI の全面展開 | 27% | 43% | 42% | 34% | | AI に耐えるデータの準備 | 38% | 87% | 82% | 74% | | 支障なく導入を進められる | 53% | 92% | 85% | 79% | | 効率化の成果 | 29% | 36% | 34% | 34% | | 汎用 AI が業界に合わない | 48% | 75% | 70% | 68% | | 責任者不在または不明 | 21% | 4% | 6% | 15% |

読み取れることを 3 つに分けます。

  1. 展開の遅れ。全面展開は 27% で、世界平均の 34% を下回る。データの準備が 38% であることが理由として考えられ、問われるのはモデルの性能ではなくデータの側の準備である。
  2. 不満の少なさ。汎用 AI が業界に合わないと答えた割合は 48% と最少だ。シンガポールは 75%、オーストラリアは 70% である。
  3. 責任者の不在。21% は調査した 7 市場で最多である。

不満の少なさの読み方

不満が少ないことを、良いこととして読む向きもあるでしょう。しかし、この数字は展開率と対で見る必要があります。

シンガポールとオーストラリアは、展開率が高い分だけ汎用 AI の限界にぶつかっています。業界ごとの手順と規制とデータ構造の中で、汎用の道具では足りない部分が目に入るようになるためです。

日本は展開率が 27% です。天井に達していないため、不満が顕在化しません。つまり 48% は、汎用 AI が業界に合っているという意味ではありません。まだ限界を測っていないという意味です。

同じ構図は、責任者の不在にも当てはまります。仕事を渡していないため、誰が責任を持つかという問いが発生していません。

エージェントに仕事を渡すときの前提

調査は、AI の役割の変化も捉えています。業務プロセスを自主的に実行するエージェントに、どこまで任せられるかという問いです。アメリカでは、多くのプロセスを自律エージェントに任せてもよいと答えた経営層は、2026 年 4 月の 10% から 10 月の 15% に増えました。

Infor のブログ記事は、同時に別の数字を載せています。AI が生成した知見とワークフローの 44% は、専門家による確認と調整が必要という回答です。

任せる範囲が広がり、確認の必要が残る。この 2 つの間に、責任の所在を置く必要があります。しかし、責任の置き場所は市場ごとにばらついています。

数値は世界全体です。日本は不在が 21% で最多です。どこに置くかは、会社の規模と業種で変わります。問題は、置く場所が決まっていない状態のまま、仕事を渡し始めることです。

富士通の事例が示す組織側の作業

導入の遅れを埋めた側の事例として、富士通の数字を確認します。

同社は Microsoft 365 Copilot を 10 万ライセンス規模で導入しました(ITmedia の @IT、2026 年 10 月 8 日)。2026 年 6 月時点で、利用率は全社 90% 以上を維持しています。サービスデスク業務では、年間約 30 万件の問い合わせのうち、約 75% を AI エージェントが一次対応と問い合わせ内容の精査で自動化しました。

注目したいのは、成果の内訳です。同社は習熟度に応じたトレーニング動画とハンズオンセミナーを用意し、優れた取り組みを表彰する社内コンテストを続けています。ライセンスを配ることと、使われることは別の作業です。

責任者の不在を埋める取り組みも、これと同じ性質を持ちます。誰が答えるかを決め、確認の手順を用意し、運用を続ける組織側の作業です。

開発者が先に決められること

制度の改定を待たなくても、開発者が先に決められることが 3 つあります。

  1. ワークフローごとに責任者を一名置く。エージェントに渡す仕事を単位にして、その結果に答える者を決める。
  2. 委任の範囲を記録に残す。どの仕事を、どこまでの権限で任せたかを、あとから読める形にする。
  3. 見直しの周期を決める。任せる範囲は、成果に応じて変わる。

日本の Zenn でも、2026 年 10 月 8 日に、エージェントの運営を文章化したルールと品質の関門で管理する事例が公開されています。役割と手順と進め方を、AI が読める文書として先に決めておく考え方です(二次参照)。

私たちのチームでは、自動化された作業の依頼を、承認した者と任せた範囲の一行とセットで記録しています。この一行があることで、問題が起きたときに何を確認すればよいかが決まります。

ガバナンスの責任者がいない会社では、まず 1 つのワークフローから始められます。全社の規則ができる前から、開発者が決められる範囲があります。

参考情報