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生成 AI の利用ルールは二層で書く——法が許す範囲と、社内が許す範囲

生成AI 日本語 ガバナンス 開発 現場

はじめに

この稿は、日本の会社で「生成 AI の利用ルールを作れ」と言われたときに、何から書けばよいかという問題を扱います。禁止事項を並べるだけでは、現場の手が止まります。かといって何も書かなければ、あとから説明ができません。

2026 年 10 月 6 日、セガの齋藤剛氏が日本経済新聞の取材に応じました。報道によれば、同社は生成 AI を発行や企業管理の部門で効率化に使い、事業のアイデア出しにも使う一方、ゲーム開発の過程では慎重に扱い、ゲームの創造的な部分は AI に任せないとしています。なお、この内容は二次報道で確認したもので、日本経済新聞の原文は取得できていません。

この一言は、会社のルールを書くときの層の分け方を、はっきり示しています。以下、法律の層と社内規則の層を分けて考えます。

二つの層

生成 AI を使えるかどうかを決める層は、少なくとも 4 つあります。法律、配信プラットフォームの規約、社内の規則、そして製品ごとの判断です。この稿では、このうち法律と社内規則の 2 つに絞ります。

法律は、許す範囲を決めます。社内規則は、その範囲の中でさらに狭く引きます。この 2 つを同じ紙に混ぜて書くと、現場は「法律で禁止されているのか」と読み違えます。

法律が許す範囲

日本では 2023 年、学習のためにデータを利用することは、商用であっても著作権法に触れない、という整理が示されました。これは世界でも珍しいほど広い整理です。セガの判断も、この整理を前提にしています。

法律の層だけを見れば、生成 AI を使える範囲はかなり広い、ということになります。

社内規則が狭くする理由

では、なぜ社内規則をわざわざ狭くするのか。理由は 3 つあります。

1 つ目は、権利の判断です。学習のための利用が法律上問題なくても、生成物を製品に載せる段になると、権利者への説明が別途必要になります。

2 つ目は、説明の必要です。顧客や取引先から「この作品のどこを AI が作ったのか」と聞かれたとき、答えられる状態にしておかなければなりません。

3 つ目は、地域差です。生成 AI への見方は国によって違います。ある地域で問題にならない使い方が、別の地域では反発を招きます。セガが委員会に各地域の広報と法務の担当者を入れているのは、この 3 つ目への対応だと報じられています。

セガが引いた境界

セガの境界は、工程ごとに引かれています。

ここで注目したいのは、これが禁止の一覧ではなく、工程の一覧になっている点です。同じ会社の中でも、工程によって扱いが変わることを前提にしています。

報道では、同社の委員会が 2024 年 4 月に利用の指針を定め、その後も更新しているとされています。委員会は、どの道具を開発し、どこに使ってよいかを、業務部門と対話しながら決める役割を持ちます。

記録と開示をデータにする

セガの取り組みで、技術者にとって参考になる点が 2 つあります。

1 つ目は、使ったことを記録に残すことです。どの工程で、どの道具を、何のために使ったかを残しておけば、後から確認できます。

2 つ目は、開示を実務として扱うことです。パソコン向けの配信プラットフォームは、作品に AI が関わった場合の申告を求めています。同社はこの申告を、広報と法務の作業として処理していると報じられています。

これは、ルールを「読む文書」ではなく「書き出すデータ」として設計する、という見方です。

技術者ができること

制度の改定を待たなくても、技術者が先に用意できることがあります。

工程を一覧にする。 企画・素材の作成・実装・検証・配信の準備という単位で並べます。

各工程に印を付ける。 AI を使ってよい・条件を付ければ使ってよい・使わない、の 3 つを割り当てます。

記録の項目を決める。 どの工程でどの道具を使ったかを、あとから検索できる形で残します。

この 3 つがあれば、社内規則の草案を、禁止の一覧ではなく工程の一覧として書き始められます。

参考情報