AI が書いた記事を公開する前に、人が確かめること
はじめに
この稿は、AI に記事を書かせて公開している方に答えます。問いは、人の確認は何を確かめた状態なら「人が主体となって情報を発信した」と言えるのか、というものです。
2026 年 10 月 17 日に Zenn で公開された「PC に住む AI の相棒は、何でできているか(第1回)」は、冒頭にこう書いていました。記事を書いたのは試作の AI 自身であり、公開する前に開発者が中身を確かめている、と。同じ日には、Claude とのチャットだけで記事を書いて予約投稿まで済ませる運用の記事も出ました。
AI が執筆し、人間が確認して出す。この形は Zenn 運営が 2026 年 3 月 10 日に出した方針と重なります。方針は「人が主体となって情報を発信する場」を大切にするとし、公開前の正確性の検証と、著者自身の経験や洞察を挙げています。
運営が名指しする自動運用
Zenn の方針は、AI を使うことを禁じてはいません。その一方で、ボットを用いてアカウントを自動運用する方と、著者自身による検証が追いつかない速度で投稿する方を名指しで懸念しています。利用規約では、機械により自動生成された文章の投稿をスパムとみなし、コミュニティガイドラインでも生成 AI による乱造を控えるよう求めています。抵触すると判断された場合は、アカウントの凍結を含む措置がありえます。
あわせて、ユーザーごとに期間あたりの投稿数に上限があり、その数は非公開です。2026 年 5 月 18 日の告知では、トピックに紐づく投稿の表示にアルゴリズムが導入されました。同じ告知の中で、アカウントの運営を自動化して機械的に投稿することは利用規約とガイドラインの違反だと明記されています。
読み取れる筋は「AI を使ってはいけない」ではなく「人が主体であることを保て」です。
10 月 17 日の記事が示す確認の書き方
「PC に住む AI の相棒」の記事を読むと、検証の状態が本文に書かれています。見張り役として別の会社の AI を置いた理由が、こう説明されていました。同じ会社の AI だと、同じ癖を見逃す可能性があると考えたからであり、確かめた事実ではなく置いた理由です、と。設計の動機と検証済みの事実を区別しています。
効果についても同様です。どの部品が本当に効いているのかは、まだ十分に確かめられていないと書いています。動いた記録と、効いた確認を分けています。
この書き方は、読者がどこまでを確実と受け取るかの札になります。未確認の箇所にラベルを残せば、人の確認は「そのラベルが正しいか」を点検する作業になります。
役割の分担と、主体の所在
あの記事の構成は、役割の分担そのものです。頭は Claude Code、見張り役は Codex、設計の相談役は ChatGPT です。見張り役は 1 分ごとに直前のやり取りを確認し、問題があれば一言、なければ黙ります。
見張りの間隔は調整されています。最初は 15 分ごとでしたが、大切な場面を見逃し、今は 1 分だそうです。
ここで問いたいのは、誰が主体かです。複数の AI に作業を委ねる構造では、最終的な判断と公開の実行を誰が持つかが主体の所在になります。見張り役が指摘を出しても、それを採るかは人間の判断です。
検証の道具と、人が確かめる部分
Zenn は 2026 年 3 月 24 日から、記事の AI レビュー機能をベータ提供しています。誤字脱字や形式の崩れ、技術的に明らかな誤り、API キーなどの混入を検査します。月間の使用回数には上限があり、個人は 10 回です。
ただし、Zenn 自身がこう断っています。AI レビューは内容について何らの保証をするものではなく、誤りが含まれる可能性がある、と。道具が担うのは形式の検査です。
人が確かめる部分は 2 つあります。1 つは数字です。いつ、誰が、どの調査、途中経過か正式報告か。もう 1 つは、経験に基づく記述か引用かの区別です。「著者自身の経験や洞察」は、道具では検査できません。
公開の判断を人に残す実践
先に組み上げた例もあります。2026 年 9 月 3 日公開の実践記では、AI の責務を草稿の生成と編集までに限り、公開の実行は人間が持っています。AI が生成した記事は published: false の草案として Draft PR に入り、人間がマージを承認して初めて公開されます。公開フラグの検査は、AI の指示層の外にある固定のスクリプトで行われます。
当方でも同じ形を採っています。AI が起草した稿を、別の語種に回訳した確認用の資料と一緒に人間へ渡し、確認を得てから公開します。
予約投稿にも注意が必要です。2026 年 10 月 17 日付の運用の記事では、24 時間あたりの記事の投稿数に上限があり、予約中の記事もこの数に含まれると報告されています。自動で投稿を積む運用では、この上限に早く到達します。
確認の記録として残すもの
実務として、確認の記録は 4 項目に絞ります。
- 数字の出典。いつ、誰が、どの調査、途中経過か正式報告か
- 経験と引用の区別。自分で確かめたことと、他から引いたこと
- 未確認のラベル。効いたかどうかと、効くと考えたかの区別
- 確認したという記録。誰が、何を、いつ確認したか
この 4 項目で、主体は人に残ります。
参考情報
- Zenn 運営「AIによるコンテンツ執筆に関するZennの方針について」、Zenn インフォ、2026 年 3 月 10 日投稿
- Zenn 運営「記事のAIレビュー機能の使い方」、Zenn、2026 年 3 月 24 日公開
- Zenn 運営「Followingページのトピックに紐づく投稿にアルゴリズム表示を導入します(ベータ版)」、Zenn 公式告知、2026 年 5 月 18 日投稿
- kamekamereon 氏「PC に住む AI の相棒は、何でできているか(第1回)」、Zenn、2026 年 10 月 17 日公開
- daphne 氏「Zennの記事を、Claudeとのチャットだけで書いて予約投稿まで済ませる」、Zenn、2026 年 10 月 17 日公開
- 権限境界の実践記「AIにZenn下書きを書かせる自動化で守るべき権限境界」、Zenn、2026 年 9 月 3 日公開
本記事は AI の支援を受けて執筆されました。事実の確認と内容の責任は筆者にあります。